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行動アシストラボの研究員が本を読んで勉強になったことを綴ります。

行動変容法入門 第9章シェイピングの解説

 

.研究員の藤井です。行動変容法入門9章「シェイピング」の解説をしていきます。

まず定義から確認していきましょう。


【定義】
・シェイピングは現時点で起きていない行動を起こすために用いられる。
・いきなり標的行動を強化せず、標的行動に至るまでの行動を分化強化します。

 

【この技法を用いるための手順】

1標的行動を具体的に定義する。

2シェイピングが最も適切な介入方法を検討する。

3まず、最初の介入対象となる行動(起点となる行動)を決める。

4シェイピングステップを選択。

5シェイピングの手続きで使用する好子を決める。

6各ステップの行動を分化強化する。

7シェイピングを適度なペースで進める。

 

具体的に各手順を述べていきます。 

1.標的行動を定義する
・シェイピングプログラムのゴールである標的行動を決める。
・この標的行動が最終的に達成できたかどうかでシェイピング成功の成否が決まる。

 

2.シェイピングが適した方法かを決める
・シェイピングは「現在起きていない行動」を形成するための方法である。
・行動が起きる回数を増やす場合はシェイピングではなく分化強化を適用する。

・対象者が標的行動のやり方をすでに知っていたり、すでに(回数は少ないものの)
 標的行動を起こしているならシェイピングを用いる必要はない。他の方法を用いる。

3.最初の介入対象となる行動(起点となる行動)を決める
 最初の介入対象となる行動はすでに起きている行動にする。
 なおかつ、標的行動に到達するための基礎となる行動にする。
 
4.シェイピングステップを選択する。
 シェイピングでは、各ステップで設定されている行動、パフォーマンスなどを
 クリアしたら次のステップに進む。
 ステップするための基準が厳しすぎてはいけない(スモールステップ)。

5.シェイピングの手続きで使用する好子を決める
 各ステップをクリアしたら対象者に提示する好子を決めておく。
 対象者が飽きてしまうような好子はあまり望ましくない(食べ物、おもちゃなど)。
 それよりもトークン(お金、引換券)や賞賛(社会的注目)のほうが飽きが少ない。

6.各ステップの行動を分化強化していく(漸次的接近)
 最初の介入対象となる行動(起点となる行動)を強化していく。
 標的行動に向けて似ている行動をステップに従い分化強化していく。

7.シェイピングを適度なペースで進める
 ステップごとに設定してある行動を習得出来たら次のステップへ進む。
 

〇シェイピングが問題を引き起こすことも。。。

子育て場面や人間関係でのトラブルもシェイピングによって説明できます。

例1仕事中の母親に構ってもらおうとして癇癪をエスカレートさせる子供


・母親A子は子ども(3歳)と一緒に暮らしている。

・A子は漫画家で在宅で仕事をしている。
・たまに近所に住んでいる母親が子供の面倒を見に来てくれる
・問題は子供と二人きりの時に起きた。
・A子が仕事していると子供はかまってほしいのか何度も抱きついてくるのである。
・仕方なくその都度相手をしているのだが仕事にならない。
・友人の臨床心理士のフジイに相談すると
 「行動分析学で言うところの消去を用いればいい!抱き着いてきたら無視!
  目も合わせちゃダメ」とのこと。
アバドイス通りにやってみた。
・結果は大失敗。
・子どもは構ってもらえないために、泣いたり、叫んだりする始末。
・仕方ないのでA子はその都度相手をする。
・落ち着いたら再び無視するようにした。消去の手続きを行ったのである
・すると子どもの癇癪はエスカレート。

「泣く」→「おもちゃを投げる」→「A子の手にかみつく」→「漫画の原稿に破く」
・問題は一層複雑になったのである…。

 

シェイピングは非常に便利な手続きです。

なおかつ日常的によく使われている方法です。

ただ、うっかりすると問題を複雑化してしまうこともありますので注意が必要です。

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研究員 藤井 崇